roseに口づけを

愛島セシルに愛を捧ぐウェブログ

芥川龍之介『杜子春』を読んだ感想を書こうと思ったのに、途中で違う話の感想を書いてしまった感想文


www.aozora.gr.jp
お話の内容が好きじゃなかった〜!!
なんかよくわかんない夢オチ?みたいな話だし……。
杜子春も仙人も何したいのかよく分からなかった。

偏見に塗れたあらすじ

お金持ちの家に生まれた杜子春はある時貧乏になったが、
仙人のお爺さんに出会って裕福にしてもらう。
ラッキー仙人チャンスは2回もあったのに、2回とも浪費してやっぱり貧乏になる。

お金のせいで人間不信になって人間やめたくなった杜子春は、仙人になりたくなったので、仙人に弟子入りを志願する。
連れられた場所で仙人から試練を与えられて、色々な辛い目に遭うが、それは全部幻だった。
試練の最中に仙人が喜ぶ行動をとれた杜子春は、ご褒美に素敵なお家をプレゼントされた。
仙人が弟子にしてくれるって言ったのは結局嘘だったけど、
杜子春はもう仙人になりたくないので良かった。
めでたしめでたし。


杜子春も仙人もよく分からないキャラクターだったので、読み終わってもスッキリしなかったです。
杜子春はこれからは人間らしく暮らしたいとか言ってたけど、
他人に与えられた土地で再スタートしてるし、
桃の木と畑がついたお家ってセレブの別荘っぽいとか思っちゃって、
なんだかなーと思ってしまった。

小説に書かれている時代の価値観と私の価値観が違う可能性があるけど、
住む家もらえるのは普通にすごいことだと思います。
住む場所勝手に決められちゃうのは嫌だけど。


杜子春が知ったふうな感じで人間に愛想が尽きたと言ってるのに共感できなかったし、
仙人になりたがるノリが唐突で軽い気がしたので応援できなかったです。
ドラえもんひみつ道具で何がほしい?」って聞かれて「4次元ポケット」って答えるみたいなノリに思えてしまった。

それに現実的に考えると、
お金がないと相手にされないと思っているのは、
お金が他人と仲良くなるためのツールになっていた可能性もあるから、
他人のせいばっかりじゃないんじゃないの?と思ってしまいました。

私はお金目当てにされるほどの大金を持ったことがないので、杜子春の気持ちが分かりませんでした。
杜子春は、お金関係なく自分と仲良くしたいと思ってくれる人と出会いたかったっていうことなのかな。

お金ではないけれど、
ありのままの自分を見て付き合ってくれる人がいないと悩む話というと、
菊池寛の『忠直卿行状記』を思い出しました。

 以下脱線

これは実在の人物である、大名・松平忠直を題材にした創作です。
言葉遣いが難しかったからなんとなく読みましたが、
こんなような話だと思いました。

周りの人間が自分の身分に対して平伏していて、自分のことを見ていないと気が付いた忠直公が、
本心を見せてくれる人がいないか探すため、他人を試す行為を始めてしまい、とうとう残虐行為も始めてしまう。
みたいな感じ。

どんなふうに暴君だったかは、「石の俎」で検索すると窺い知れます。
http://umeno87.sblo.jp/s/article/53229268.htmlumeno87.sblo.jp

この時代の主従関係は、現代の日本人には一般的ではない関係性だから考えるのが難しいけど、
忠直公の孤独は伝わってきたのが面白かったです。

主従関係を現在の上司と部下の関係に例えることがあるけど、全く別物だなってことが分かるし、
忠誠心というのは重かったり誇り高かったりする物だと思いました。

その時代の常識で言うと、
主君に逆らうのは家臣として恥ずべきことです。
なので、例え主君が死んでほしいと思っていなくても、
家臣が己の愚行を恥じた場合は空気を読んで自害してしまいます。
つまり、忠直公が望む形での腹を割った関係には絶対になれないのです。
そのせいで死人がたくさん出てしまう悲しい話でもありました。

しかし、実際の忠直公がこのような暴君であったかは定かではないそうです。
暴君というのは中国の故事をもとに作られた創作の可能性もあるらしいです。
忠直卿行状記』の作中にも「殷の紂王にも勝る暴君だと噂されていた」という話が出てきていました。

インターネットで調べたページには、
菊池寛の『忠直卿行状記』のヒットにより、忠直暴君説を広めてしまったせいで暴君説が定着したと言う人も見つかりました。
でも、菊池寛は忠直公を悪役に仕立てて書いたわけでもなく、
忠直公の苦悩を丁寧に書いて読者が同情できるように書いているし、
更には隠居後の描写まであり、
最後は「暴君という噂話を疑いたくなるほど穏やかな人だ」と噂されていた話で終わっています。
暴君と言われた忠直像と名君と言われた忠直像の両方を書いていると思いました。

だから『忠直卿行状記』を読んで「忠直は暴君で酷い奴なんだ!」ってイメージを抱いた人がいるとしても、
それは菊池寛のせいじゃないんじゃないかなと思いました。

面白い歴史小説って、読む時にフィクションって思いにくくなる不思議な力があるのかな。
司馬遼太郎の小説を史実と思っちゃうのと似たような話だなと思いました。*1
とりあえず菊池寛は悪くないと思います。

忠直公の真実を研究してる人もいるみたい?
日本史ミステリーな感じで面白いですね。
blog.livedoor.jp
www.saizou.net

 脱線おわり

話を『杜子春』に戻します。
杜子春』の解説をしているページを見つけました。
bungo-matome.com
どうでもいいけど、こういうページって読書が苦手な人向けに書かれてて便利だけど、
「5分で分かるような話なんだー」って思わせてしまう逆効果な面もある気がする。
この人によると「本当の幸福は人間らしく生きること」っていう教訓の話らしいです。
なんかイマイチ納得いかないというか、響かないな〜〜。

別の解説だと別のことが書いています。
好きな読み方を選ぶといいってことかな。
www.isc.meiji.ac.jp

途中の鉄冠子の歌が、呂洞賓という他の仙人の詩を引用した物だという話を調べていたら見つけた論文のPDFファイルも貼ります。
きっと読んだら面白いはずです。
芥川龍之介の「杜子春」ー鉄冠子七絶考ー 成瀬哲生

有名な文豪の作品って調べると論文見つかって面白いけど、難しくて飽きるからちゃんと読めない。
頭良くなりたいわ。

*1:私は『燃えよ剣』を読んで面白かったけど、あの土方歳三は司馬の歳三って思って読んだ方がいいよなあとも思った。